東京の街へやってきた
職員旅行、
こういう場ではなにより大事なハズの団体行動から外れたぼくは
東京の街をふらりふらり
ひとりお茶の水へ
知っている場所、知っているはずの場所
知っているはずのレコード屋さんは健在で営業中の札が揺れるのだけれど
内に店員さんの姿はなく
入口には鍵もかかり入店できなかった
そして、またひとり記憶を頼りに歩いて
思い出の公園、ベンチに腰掛けてみた
それから新宿へ
10数年ぶりの友人達と感動の再会を果たし
日が沈む前から
新宿の公園で缶ビールをあおりはじめた
深い夜の居酒屋から
朝を迎えに友人宅へ
ウイスキーの川の流れるところで目が覚めて
午後は生きる屍
そして…
また夜だ
友人の新居へお邪魔
飲めない夜
あったかい布団
爽やかな朝、やさしい朝食
「ありがとう」と
みんなとお別れした最終日は国立駅
多摩蘭坂はどこだかわからなかった
「ぼくの自転車のうしろに乗りなよ
坂を下って 坂を下って 国立に行こうか
ぼくの自転車のうしろに乗りなよ
大学通りを 大学通りを 二人乗りしようよ」
最後は渋谷へ立ち寄り、明治通りを歩く
その先に
モッズパーカーをはおって、細いジーンズに白いスニーカーを履いた男の子がいた
右手にはディスクユニオンの袋が揺れている
あ… あれは 10数年前の オレだ
…
違った
そんなわけはないのだ
男の子の耳元でイヤホンが揺れる
どんな音楽が流れているのだろう
もしかしたら、趣味が合って友達になれるかもしれない
そう思ったところで、なんだかおかしくなった
十代の頃もそんなことを思ってたなと…
気の合う友達をいつも探していたのだ
「君はいつもぼくを愛してる 君だけがぼくの味方だった時もあった」
10数年前、
おばあちゃんにもらった弁当箱みたいに大きなぼくのウォークマンは
毎日、毎日
そんな風に歌ってた