時間はまるでかけ足 びゅーん とね
ものすごい晴天のすくも最終日

ゆうべはあんな大雨だったのに からりと晴れ
ひとり感慨深げに玄関で歯磨きをしていたら 猫が1匹すりよってきた
ぼくは他の誰にもきこえないように
「今日帰るぞ」とささやいた
それをきいた猫は
「にやー」と言って かろやかに庭へと出てゆく

歯磨きをしながら あとを追う
そこにはまるまると太った 秋の金魚
「にゃー」
猫は夏の金魚が ちゃんと大きくなるということを教えてくれる
知らなかったでしょう 金魚は大きくなるのです
彼らは春に生まれ
主役の夏を生きて
秋と冬を けなげに越えてゆくのでした

たくさんの家族
たくさんの友人
座くろ
キャンプ
鳥十
バッカス
ノイエ
サッカー
バーベキュー
大宴会
会えた人、会えなかった人
いろいろとあったけれど ひとまず今日でおしまい
ただ、日々はつづいてゆくものだから
…
金魚の泡と一緒に
日々の泡もぷくぷくと音をたてる
すくもで 生まれ、育った
それで
ぼくがいるのだった
玄関へ戻るとどこまでもついてくる君がいて
ごろごろとのどを鳴らし ぺたりとねそべった
とても 気持ち良さそうにしている

「おい」と呼んだら
ぼくを振りかえり
「にゃー」と言って
またじっと外を見ていた
「そこから何が見えますか?」
ラベル:宿毛市