夕焼けにウイスキーを転がしてたら
ひもじそうな顔つきのきたきつねがとぼとぼとやってきて

「すいませんが、わたしもそいつが欲しいです」と言う
「いやいや
突然やって来て何言ってんだ
そいつぁ無理だよ
オレの大事な大事なウイスキーだからな」
とはっきり言ってやった
すると
つまらん同情でもひこうとしているのか
とても寂しそうな悲しそうな目をして、暫らくこっちを見ていた
10分
いや
20分ほどそこに居ただろうか
彼はオレが何も与えないのを察すると
諦めてしまった
そして
悲しそうな声で夕陽に向かって鳴き、
こちらを一瞥した後

来た時と同じようにとぼとぼと雪の残る山の中へ消えていった
「さようなら」
”馬鹿は丘の上
太陽が沈んでいくのを見た
頭の中の目には
世界がぐるぐる回っているのが映っている”
我が家の小さなポータブルスピーカーがそう歌った
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