2011年10月29日

帯広のデヴィット・ボウイF

愛国駅をあとにした


妄想は終わりだ




デヴィット・ボウイ


そう


子供のころ、ミックジャガーと並んでおかまのおっさんだと思ってた人は、


ほんとうはかっこいいロックンローラーだった


「Five Years」David Bowie




デヴィット…


roll.jpg





帯広は大きすぎる



街は雪



それは幸せな駅も同じだった



「着いた。幸福駅や」



しあわせ2.jpg


「ここが

幸せばっかりの夢の駅か」


「知らん」


「オレは昔、テレビで観た」



ここには

誰でも自由に鳴らすことのできる幸せの鐘があって、

駅舎内には幸せになりたい人達の

名刺や切符、願い事がかかれた紙がたくさん貼ってある



「それ、鳴らせば…」



カーン と甲高い音をたてた

しーんと静まりかえった駅に、ホームに響く




「これでオレは幸せだろうか?」



カーン



嫁も続いた



「はて…」





音の先、鐘の向こうにのびる小さなホーム


そこに

オレンジ色した幸せの電車


それは雪にとまってしまったといった感じだ


しあわせ1.jpg



「うひー 寒いぞ」



ジャケットの襟を立てて足早に電車へ向かう



「あんた、人を待たんね」



そして、車内


しあわせ.jpg


誰もいなかった ここもまたしーんと静まりかえっている



歩くと

こつんこつんとブーツだけが音をたてた



「もしー」



やっぱり誰もいない


遅れて嫁も乗りこんむ



「中も寒い…」



ぎしぎし床が鳴った



「古いね。隙間風も…」




「でも、雰囲気がある」



「この椅子… しぶい」



そう言って


電車中央、二人で青いレトロな椅子へ腰かけてみた


窓の外は相変わらずの雪景色




「乗車券を拝借」



「いや、乗車券のない雪国の列車や」







“発車のベルが鳴り


ひとつ駅を越えた


通り過ぎるのは早すぎたのだろう


泣いている人がホームで手を振った


ほんとうの別れのアナウンスが流れる”








きっと


オレ達が知らなかった風景だ



北へ

北へと夢をもとめて向かった列車は ここでとまった



「寒いね」



「寒い」



「床が木」



もう閉まらなくなった窓の隙間から雪が降りこんだ



木の床が雪で湿っている






ここは

ここで


夢の駅だったのかもしれない




「出ようか。街へもどろう」




電車を出てまたホームを歩く





駅舎へは何も貼らなかった

願いごともかかなかった



もう 必要がなかったからだ






駅を出ると


ざくざくと雪を踏みしめるいくつかの足音


えらく厚着をした中年の夫婦と若いカップルだ


すれ違いに駅へと入って行った




「カップルばっかや」



「そういう場所やろ」 



「まぁええわ、とにかく今日の宿泊地を決めんと…」



「暖かいキャンプがええ、寒いがは嫌で」



「この状況で暖かいキャンプなどない」



そう言ったが、エンジンの始動音にかき消された










「幸福駅よ、さようなら」




「あああ そや、温泉入ろうー」




「十勝川温泉かぁ」







カーン 





遠くで 鐘の音がする







駅が


少しずつ


少しずつ 遠ざかっていった






「帯広にデヴィット・ボウイがいた」





今日の宿泊地を求め また車は走る



外は深い雪









おわり



ラベル:夢の駅
posted by yuzamurai at 18:42| Comment(0) | TrackBack(0) | たびの手帖(Thee 北海道編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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