大学ノートの裏表紙
さなえちゃん かいたんだっけ?

男は30を過ぎたら走りたくなるそうだ
そんなこんなで たった今、タタタッと町内を走ってきた
知り合いに会うと恥ずかしいので、Tシャツの上にパーカーを着込みフ
ードを目深に被って 怪しく走る
人もまばらだ 昼間でもまばらだけどね
そして信号機は点滅が美しいそいつを鋭く左折し、しばらく走ると右手に病院が見えてくる
我が兄弟皆この病院で生まれたのだ・・・ そんなノスタルジックに浸る間もなく
坂を登りきり左へと下る
当然ながら暑い もの凄い汗
母校の前を全力で走りぬけると今度は寂れた飲み屋街
客を送る飲み屋の姉ちゃんとストイックなオレ(に見えないだろうか?まだ暑いこの時期にパーカー&フードなのだ。それよりも怪しいか。)
あっという間に我が家に到着
しかし 体力の衰えた私には過酷な町内一周 ぜーぜーいって帰って来た
と、とりあえずビールじゃろうと冷蔵庫オープン
パキッとやって グビグビいく
めっちゃうまいじゃん
こんなことでこんなにうまくなるんなら 明日から走ろう ビールの為に
てな間に 遠く関西にいる両親から”元気ですか?”と電話があった
「あんた ハァ ハァ言ってるが大丈夫か?」とオカンが言う
「たった今まで 走ってたんじゃ 正常な証拠じゃい」と言った
家は兄弟が5人もいてそれぞれ別々に住んでいるので安否を確かめるに
は5件に連絡が必要だ
オカンやんのも楽じゃないぜ兄弟間の連絡はないから、誰々が今何しててなんて話はオカンが一番知っている
オカンより 兄弟それぞれの現状が報告される
「5人もいれば誰が元気で誰かが元気でなくてもしかたなかろう」
と言うとオカンが笑う
電話の最後に
「北海道に住みたいのだ」
とオレが言うと遠いのでやめてくれと言った
そして 電話が切れた
しかし、 時がたつのは早いもので・・・
昔は皆一つ屋根の下に住んでいたんだがね
それに皆歳もとったな 一番下の弟は今年二十歳だろうと言うと
もう22歳だとオカンが言った
永遠などどこにもないぜ 何もかも変わっていくのだ
長電話で忘れられたビールも汗をかいてた
ぬるくなったそいつを一息に飲み干す
変わらないものなんか何一つないけど
変わるスピードが違ったんだな
あの日、夕食の準備中オカンが台所で歌った歌
幼いオレが「それ なんて歌?」と聞くと
「さなえちゃん」だと言った あの歌
それから しばらくして 仕事帰りの嫁が冷奴買って帰って来た
「愛おしいぜ」と言うと
「何の事?」と嫁が言ったのでした
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「ウルトラマンやヒーローに少年は憧れた」へ「映画のお話」へ
posted by yuzamurai at 22:53|
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